発音入門English Pronunciation
英語はローマ字のようにつづり通りに読めるとは限りません。同じ文字が単語によって違う音になったり、逆に違うつづりが同じ音を表したりします。ここでは、つづりと音の関係の基本から、日本語にない子音、母音の書き分け、二重母音、語尾の子音、強勢とリズム、単語同士がつながる音まで、発音のしくみを順番に整理します。まずは全体の考え方をつかみ、あとは単語ごとの発音記号(IPA)と音声で少しずつ確認していきましょう。
1. つづりと音の関係
英語はひらがなやカタカナのように、1文字が1つの音に対応する言語ではありません。同じ文字でも単語によって違う音になり、逆に違うつづりが同じ音を表すこともあります。ここでは、つづりから音を予測する入り口となる基本のしくみをIPA(国際音声記号)とあわせて見ていきます。
同じ文字でも音が変わる
文字cは、catでは/k/、cityでは/s/という違う音を表します。circleのように、1つの単語の中に両方の音が出てくることもあります。つづりだけを機械的に読むのではなく、単語ごとに正しい音をIPAと音声で確認しましょう。
- cat 猫
- city 都市 cは/s/の音
- circle 円 1語の中に/s/と/k/の両方
フォニックス:文字と音を結ぶ基本ルール
文字と音の対応パターンをまとめた学び方をフォニックスと呼びます。単独の子音字は比較的規則的で、bは/b/、shは/ʃ/、chは/tʃ/のように決まった音に結びつきます。フォニックスは発音を予測するための入り口であり、すべての単語を説明できるわけではありません。
- bag かばん
- ship 船 shは/ʃ/の音
- chair いす chは/tʃ/の音
- queen 女王 quは/kw/の音
マジックe:語末のeで前の母音が変わる
子音字のあとにeが続く単語では、eそのものは発音されず、代わりに前の母音字がアルファベットの読み方に近い音に変わります。この語末のeを、マジックeと呼びます。capとcapeのように、eが1文字増えるだけで母音の音が大きく変わる点に注意しましょう。
- cap 帽子 eなし。母音は/æ/
- cape 岬 マジックe。母音は/eɪ/
- kit 道具一式
- kite 凧
- hop 跳ぶ
- hope 望む
2. 日本語にない子音
英語には、日本語の発音のしくみだけでは区別しづらい子音がいくつかあります。舌・唇・息の使い方を意識して出す練習をすると、聞き取りにも発音にも役立ちます。ここでは特につまずきやすい5つの区別を見ていきます。
/r/と/l/の違い
/l/は舌先を上の前歯の裏の歯ぐきにしっかりつけて出す音です。/r/は舌先をどこにもつけず、口の中で少し丸めるか奥に引いた状態で出します。舌が歯ぐきに触れるかどうかが、この2つの音の一番の違いです。
/θ/と/ð/(thの2つの音)
thの文字は、舌先を上下の前歯の間に軽くはさみ、そのすき間から息を出して発音します。声帯を震わせない/θ/と、声帯を震わせる/ð/の2種類があります。日本語にはこの舌をはさむ動きがないため、まず舌の位置を意識することが第一歩です。
/v/と/b/の違い
/v/は上の前歯を下くちびるに軽く当て、そのすき間から息と声を出し続ける音です。/b/は上下のくちびるをしっかり閉じてから開け、一瞬で息を破裂させる音です。くちびるだけを閉じる/b/と、歯とくちびるを使う/v/の違いを意識しましょう。
- van バン(車の種類)
- ban 禁止する
- vote 投票する
- boat 船 /v/と/b/の聞き分けに注意
/f/の音
/f/は上の前歯を下くちびるに軽く当て、声を出さずに息だけをすき間から出す音です。上下のくちびるを閉じて出す破裂音とは違い、歯と唇のすき間から息を摩擦させ続ける点が特徴です。
3. 母音の書き分け
英語には、日本語の「ア」にあたる母音が複数あります。口の開け方や舌の高さ・前後の位置が変わると、まったく別の単語になってしまいます。ここではcat・cut・hotの母音の違いと、もっとも頻度の高いあいまい母音を確認します。
/ʌ/:cutの母音
/ʌ/は口をあまり開けず、舌の中央あたりの力を抜いて短く出す母音です。口の開きは/æ/よりずっと小さく、力を入れずにリラックスして出す点が特徴です。
/ɑ/:hotの母音
/ɑ/は口を大きく縦に開け、舌の後ろの部分を低く下げて出す母音です。アメリカ英語のhotやstopに使われる、口を大きく開けたはっきりした音になります。
三つの聞き分け:/æ//ʌ//ɑ/
この3つの母音は、口の開け方と舌の位置がそれぞれ違います。/æ/は横に大きく開く、/ʌ/はあまり開けずに力を抜く、/ɑ/は縦に大きく開ける、という違いを意識すると区別しやすくなります。
4. 二重母音
二重母音は、1つの音節の中で口の形が滑らかに変化する母音です。日本語のように2つの母音を別々に発音するのではなく、始まりの音から終わりの音へなめらかに移動させます。ここでは代表的な5つの二重母音を確認します。
/eɪ/:dayの母音
/eɪ/は、口をやや開いた/e/に近い形から始め、口を閉じながら/ɪ/に近い形へなめらかに動かす二重母音です。2つの音を区切らず、1つの音節としてつなげます。
/aɪ/:timeの母音
/aɪ/は、口を大きく開いた/a/に近い形から始め、/ɪ/に近い形へ口を閉じながら動かす二重母音です。あごを大きく下げてから、すばやく閉じるイメージです。
/oʊ/:goの母音
/oʊ/は、くちびるを丸めた/o/に近い形から始め、さらにくちびるを丸めながら/ʊ/に近い形へ動かす二重母音です。1つの母音で終わらせず、最後までくちびるを丸め続けます。
- go 行く
- home 家
- boat 船
/aʊ/:nowの母音
/aʊ/は、口を大きく開いた/a/に近い形から始め、くちびるを丸めながら/ʊ/に近い形へ動かす二重母音です。あごを下げてから、くちびるを丸めて閉じる動きを意識しましょう。
5. 語尾の子音と子音連結
日本語の音節はほとんどが子音+母音の組み合わせでできていますが、英語では子音だけで終わる単語や、子音が2つ以上続けて並ぶ単語が多くあります。母音を足さずに子音だけを出す感覚を身につけましょう。
語末の子音に母音を足さない
英語の語末の子音は、そこで息を止めるように発音し、あとに母音を足しません。日本語の感覚で母音を足してしまうと、単語の音節数が増えて別の響きになり、聞き取りにくくなります。子音だけで発音を止める練習をしましょう。
- cat 猫 語末の/t/で止める
- dog 犬 語末の/g/で止める
- bag かばん 語末の/g/で止める
語頭・語末の子音連結
英語では、母音をはさまずに子音が2つ以上続けて並ぶことがよくあります。streetの語頭のように子音が3つ続く場合も、母音を入れずに一続きの息の流れの中で発音します。
- street 通り 語頭に/str/の連結
- desks 机(複数形) 語末に/sks/の連結
- next 次の 語末に/kst/の連結
- asked 尋ねた 語末に/skt/の連結
語尾-edと-sの読み方
過去形を作る-edは、前の音によって/t/・/d/・/ɪd/の3通りに読み分けます。複数形や3人称単数を作る-sも同じように、前の音によって/s/・/z/・/ɪz/の3通りに読み分けます。つづりが同じでも音は1つに決まらない点に注意しましょう。
- walked 歩いた -edは/t/
- played 遊んだ -edは/d/
- wanted 欲しかった -edは/ɪd/
- cats 猫(複数形) -sは/s/
- dogs 犬(複数形) -sは/z/
- watches 腕時計(複数形) -sは/ɪz/
6. 強勢とリズム
英語の単語には、強く長くはっきり読む音節が1つあります。これを強勢と呼びます。文の中でも、意味の中心になる語は強く、それ以外の語は弱く速く読まれ、全体として独特のリズムが生まれます。
強く読む音節(語の強勢)
英語の単語は、複数の音節があるとき、そのうち1つの音節だけを強く・長く・高く読みます。同じ語根から派生した単語でも、強勢の位置が移動することがあります。強勢の位置を間違えると、聞き手に別の単語だと誤解されることもあります。
- photograph 写真 1音節目に強勢
- photography 写真撮影 2音節目に強勢
- photographic 写真の 3音節目に強勢
文の中の強弱(内容語と機能語)
文の中では、意味の中心を担う名詞・動詞・形容詞などの内容語ははっきり強く読まれます。一方、前置詞・冠詞・代名詞などの機能語は弱く短く読まれることが多く、この強弱の繰り返しが英語のリズムを作ります。
- Give me the book. その本をください。 giveとbookが強く、meとtheは弱い
- I want to go home. 家に帰りたい。 want・goが強く、toは弱い
弱形:canの弱い読み方
助動詞canは、文の中では弱く/kən/と読まれるのが基本です。強く/kæn/と読むのは、文の最後に置かれるときや、特に強調したいときに限られます。
- I can swim. 私は泳げます。 canは弱形/kən/
- Yes, I can. はい、できます。 文末なので強形/kæn/
弱形:toの弱い読み方
前置詞・不定詞のtoも、文の中では弱く/tə/と読まれることが多い語です。強く/tu/と読まれるのは、後ろに母音が続くときや、文末で単独で使われるときです。
- Nice to meet you. はじめまして。 toは弱形/tə/
- I have to. そうしなければなりません。 文末なので強形/tu/
7. つながる音
英語は単語をひとつずつ切り離して読むのではなく、文の中で音をなめらかにつなげて読みます。子音で終わる単語の後ろに母音で始まる単語が続くと、まるで1つの単語のように聞こえます。
子音+母音がつながる
単語が子音で終わり、次の単語が母音で始まるとき、2つの単語の音は切れ目なくつながって聞こえます。an appleは、単語ごとに区切って読むのではなく、なめらかに1つの流れとして発音します。
- an apple 1つのりんご nとaがつながる
- turn it on それをつける n・it・onが連続してつながる
check it outのようなつながり
check it outは、checkの語末の/k/がitの/ɪ/につながり、itの語末の/t/がoutの/aʊ/につながって、全体が1つの流れのように聞こえます。単語の切れ目を意識しすぎず、息の流れをつなげて読む練習をしましょう。
- check it out 確認してみて 3語がすべてつながる
同じ子音・似た子音が重なる
前の単語の語末の子音と、次の単語の語頭の子音が同じ音のとき、2回続けて発音せず、1回分の長さでつなげて発音します。big gameの2つの/g/は、途切れずに1つの音としてつながります。
- big game 大きな試合 /g/が1回分としてつながる
母音同士をわたり音でつなぐ
単語が母音で終わり、次の単語も母音で始まるときは、/j/(yに近い)や/w/(wに近い)のわたり音が自然に入り、2つの母音がぶつからないようにつながります。
- I am 私は〜です /j/のわたり音が入る
- go on 続ける /w/のわたり音が入る
App Store で近日公開